試合・審判規則/細則
(平成31年4月1日版)
(本規則の目的)
第1条
この規則は、全日本剣道連盟の剣道試合につき、剣の理法を全うしつつ、公明正大に試合をし、適正公平に審判することを目的とする。
第1編 試合
第 1 章 総則
(試合場)
第2条
試合場の基準は次のとおりとし、床は板張を原則とする。
- 試合場は、境界線を含み一辺を9メートルないし11メートルの、正方形または長方形とする。
- 試合場の中心は×印とし、開始線は、中心より均等の位置(距離)に左右1本ずつ表示する。各線の長さおよび開始線間の距離は細則で定める。
細則 第1条
規則第2条(試合場)は、次のとおりとする。
- 試合場の外側に原則として1. 5メートル以上の余地を設ける。
- 各線は、幅5センチメートルないし10センチメートルとし、白線を原則とする。
- 試合場の中心(×印)、開始線の長さおよび開始線間の距離などは、第1図のとおりとする。
(竹刀)
第3条
竹刀は、竹または全日本剣道連盟が認めた竹に代わる化学製品のものとする。竹刀の構造、長さ、重さ、太さ、つば(鍔)の規格などは、細則で定める。
細則 第2条
規則第3条(竹刀)は、次のとおりとする。
- 竹刀の構造は、四つ割りのものとし、中に異物(先革内部の芯、柄頭のちぎり以外のもの)を入れてはならない。ピース(四つ割りの竹)の合わせに大きな隙間のあるものや安全性を著しく損なう加工、形状変更をしたものを使用してはならない。各部の名称は第2図のとおりとする。
- 竹刀の基準は、表1および表2のとおりとする。ただし、長さは付属品を含む全長であり、重さはつば(鍔)を含まない。太さは先革先端部最小直径(対辺直径)およびちくとう部直径(竹刀先端より8センチメートルのちくとう対角最小直径)とする。また、竹刀は先端部をちくとうの最も細い部分とし、先端から物打に向かってちくとうが太くなるものとする。
- つば(鍔)は、皮革または化学製品の円形のものとする。その大きさは直径9センチメートル以下とし、竹刀に固定する。
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(剣道具)
第4条
剣道具は、面、小手、胴、垂を用いる。
細則 第3条
規則第4条(剣道具)は、第3図のとおりとする。
- ポリカーボーネート積層板装着面は、全日本剣道連盟が認めたものとする。
- 面ぶとんは、肩関節を保護する長さがあり、十分な打突の衝撃緩衝能力があるものとする。
- 小手は、前腕(肘から手首の最長部)の2分の1以上を保護し、小手頭部および小手ぶとん部は十分な打突の衝撃緩衝能力があるものとする。
- 小手ぶとん部のえぐり(クリ)の深さについては、小手ぶとん最長部と最短部の長さの差が2.5センチメートル以内とする。
(服装)
第5条
服装は、剣道着・袴とする。
細則 第3条の2
剣道着の袖は、肘関節を保護する長さを確保したものとする。
細則 第4条
試合者の目印は、全長70センチメートル、幅5センチメートルの赤および白の2色とし、試合者の胴紐の交差する位置に二つ折りにして着ける。
細則 第5条
試合者の名札は、第4図のとおりとし、中央の垂れに着ける。
細則 第6条
審判旗などの規格は、第5図のとおりとする。ただし、旗の柄の太さは直径1. 5センチメートルを基準とする。
細則 第7条
サポーターなどの使用は、医療上必要と認める場合に限り、見苦しくなく、かつ相手に危害を加えない範囲において、これを認める。
細則 第8条
試合者の入退場および礼法は、その大会で定められた方法により行う。
第 2 章 試合
第 1 節 試合事項
(試合時間)
第6条
試合時間は、5分を基準とし、延長の場合は3分を基準とする。ただし、主審が有効打突または試合の中止を宣告したとき、再開までに要した時間は、試合時間に含まない。
(勝敗の決定)
第7条
勝敗の決定は、次により行う。
- 試合は、3本勝負を原則とする。ただし、運営上必要な場合は1本勝負とすることができる。
- 勝敗は、試合時間内に2本先取した者を勝ちとする。ただし、一方が1本を取り、そのままで試合時間が終了したときは、この者を勝ちとする。
- 試合時間内に勝敗が決しない場合は、延長戦を行い、先に1本取った者を勝ちとする。ただし、判定または抽選により勝敗を決め、あるいは、引き分けとすることもできる。
- 判定または抽選により勝敗を決した場合は、その勝者に対して1本を与える。
- 判定により勝敗を決する場合は、技能の優劣を優先し、次いで試合態度の良否により、判定する。
細則 第9条
規則第7条5号「判定」は、次のとおりとする。
- 技能の優劣は、有効打突に近い打突を優位とする。
- 試合態度の良否は、姿勢および動作において優っている者を優位とする。
(団体試合)
第8条
団体試合は、次によるほか、その大会で定められた方法により行い、勝敗を決する。
- 勝者数法は、勝者の数によって団体の勝敗を決する。ただし、勝者が同数の場合は、総本数の多い方を勝ちとする。なお、総本数が同数の場合は、代表者戦によって勝敗を決する。
- 勝抜き法は、勝者が続けて試合を行い団体の勝敗を決する。
(試合の開始、終了)
第9条
試合の開始および終了は、主審の宣告で行う。
(試合の中止、再開)
第10条
試合の中止は、審判員の宣告で行い、再開は、主審の宣告で行う。
(試合の中止要請)
第11条
試合者は、事故などのために試合を継続することができなくなったときは、試合
の中止を要請することができる。
第 2 節 有効打突
(有効打突)
第12条
有効打突は、充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃
筋正しく打突し、残心あるものとする。
細則 第10条
規則第12条の「刃筋正しく」とは、竹刀の打突方向と刃部の向きが同一方向である場合とする。
細則 第11条
次の場合は、有効とすることができる。
- 竹刀を落とした者に、直ちに加えた打突。
- 一方が、場外に出ると同時に加えた打突。
- 倒れた者に、直ちに加えた打突。
細則 第12条
次の場合は、有効打突としない。
- 有効打突が、両者同時にあった場合(相打ち)。
- 被打突者の剣先が、相手の上体前面に付いてその気勢、姿勢が充実していると判断した場合。
(竹刀の打突部)
第13条
竹刀の打突部は、物打を中心とした刃部(弦の反対側)とする。
(打突部位)
第14条
打突部位は、次のとおりとする。(細則第3図参照)
- 面部(正面および左右面)
- 小手部(右小手および左小手)
- 胴部(右胴および左胴)
- 突部(突き垂れ)
細則 第13条
規則第14条(打突部位)は、第3図のとおりとし、面部および小手部は、次のとおりとする。
- 面部のうち左右面は、こめかみ部以上。
- 小手部は、中段の構えの右小手(左手前の左小手)および中段以外の構えなどのときの左小手または右小手。
第 3 章 禁止行為
第 1 節 禁止行為事項
(禁止物質の使用・所持)
第15条
禁止物質を使用もしくは所持し、または禁止方法を実施すること。
細則 第14条
規則第15条の禁止物質および禁止方法とは、世界ドーピング防止機構(WADA)の最新の禁止表に掲載されているものをいう。
(非礼な言動)
第16条
審判員または相手に対し、非礼な言動をすること。
(諸禁止行為)
第17条
試合者が、次の各号の行為をすること。
- 定められた以外の用具(不正用具)を使用する。
- 相手に足を掛けまたは払う。
- 相手を不当に場外に出す。
- 試合中に場外に出る。
- 自己の竹刀を落とす。
- 不当な中止要請をする。
- その他、この規則に反する行為をする。
細則 第15条
規則第17条第1号の不正用具とは、規則第3条に規定する竹刀(細則第2条で定
める規格を満たしているものに限る)および同第4条に規定する剣道具(第3図に図示する面、小手、胴、垂)以外のものをいう。
なお、細則第3条第2号から第4号および同第3条の2の基準に合致しない剣道具または剣道着は当面の間、不正用具としない。この場合、試合終了後に審判員から注意を与える。
細則 第15条
②規則第17条4号の「場外」は次のとおりとする。
- 片足が、完全に境界線外に出た場合。
- 倒れたときに、身体の一部が境界線外に出た場合。
- 境界線外において、身体支えた場合。
細則 第16条
規則第17条7号の禁止行為は、次の各号などをいう。
- 相手に手をかけまたは抱えこむ。
- 相手の竹刀を握るまたは自分の竹刀の刃部を握る。
- 相手の竹刀を抱える。
- 相手の肩に故意に竹刀をかける。
- 倒れたとき、相手の攻撃に対応することなく、うつ伏せなどになる。
- 故意に時間の空費をする。
- 不当なつば(鍔)競り合いおよび打突をする。
第 2 節 罰則
第18条
第15条、第16条の禁止行為を犯した者は、負けとし、相手に2本を与え、退場を命ずる。退場させられた者の既の一部または竹刀で身体を得本数、既得権は、認めない。
第19条
第17条1号の禁止行為をした場合は、次の各号により処置する。ただし、両者同
時になしたときは、両者とも負けとし、それぞれの既得本数および既得権を認めない。
- 不正用具の使用者は、負けとし、相手に2本を与え、既得本数および既得権を認めない。
- 前号の処置は、不正用具使用発見以前の試合までさかのぼらない。
- 不正用具の使用が発見された者は、その後の試合を継続することができない。ただし、団体戦における補欠の出場は、別に定めのない限り認める。
第20条
試合者が第17条2号ないし7号の行為をした場合は、反則とし、2回犯した場合は、相手に1本を与える。反則は、1試合を通じて積算する。ただし、同時反則によって両者が負けになる場合は相殺し、反則としない。
細則 第17条
規則第20条の同時反則による相殺は、次の方法で行う。
- 1回目の場合は、赤・白の順に反則を宣告し、相殺する。
- 2回目以降の場合は、相殺の宣告と表示を同時に行う。
②第17条4号の場合、両者が相前後して、場外に出たときは、先に出た者のみ反則とする。
③第17条4号の場合、有効打突を取り消したときは、反則としない。
④第17条5号の場合、その直後に相手が打突を加え、有効となったときは、反則としない。
第 2 編 審判
第 1 章 総則
(審判員の構成)
第21条
審判に従事する者の構成は、審判長、審判主任(2試合場以上の場合)・審判員とする。
(審判長)
第22条
審判長は、公正な試合を遂行するための必要な権限を有する。
細則 第18条
審判長の任務は次のとおりとする。
- 規則および細則の厳正な運用に留意する。
- 試合の進行について留意する。
- 異議の申し立てについて裁決する。
- その他、規則および細則にない諸問題、あるいは突発事故について判断する。
細則 第19条
試合開始時の審判長の合図は、次のとおりとする。
- 1試合場の場合は、最初の試合者が立礼の位置(開始線の手前3歩。以下同じ)に立ったとき、審判長は、起立し主審の宣告で試合を開始させる。
- 2試合場以上の場合は、最初の試合者が立礼の位置に立ち、全体が揃ったとき、審判長は起立して笛などで合図する。
(審判主任)
第23条
審判主任は、審判長を補佐し、それぞれ当該試合場における運営に必要な審判上の権限を有する。
細則 第20条
審判主任の任務は、次のとおりとする。
- 当該試合場の責任者とする。
- 規則および細則が適切に実施されているか留意する。
- 規則および細則の違反、あるいは異議の申し立てがあった場合は、適切敏速に処置し、必要に応じ審判長に報告する。
- 当該試合場の審判員を掌握する。
(審判員)
第24条
審判員は、主審1名、副審2名を原則とし、有効打突およびその他の判定については、同等の権限を有する。
②主審は、当該試合運営の全般に関する権限を有し、審判旗(以下旗とする)を持って有効打突および反則などの表示と宣告を行う。
③副審は、旗を持って有効打突および反則などの表示を行い、運営上主審を補佐する。なお、緊急のときは、試合中止の表示と宣告をすることができる。
細則 第21条
審判員の任務は、次のとおりとする。
- 当該試合を運営する。
- 宣告および表示を明確に行う。
- 審判員相互の意志統一をはかる。
- 審判員相互の旗の表示を確認する。
- 試合終了後、必要に応じ審判主任または審判長の所見を徴し、他の審判員とともに当該審判の反省を行う。
(係員)
第25条
試合運営上、時計係・掲示係・記録係・選手係を置く。その構成および任務は、細則に定める。
細則 第22条
規則第25条の係員の構成および任務は、次のとおりとする。
- 時計係は、原則として主任1名、係員2名以上とし、試合時間の計時にあたり試合時間終了の合図をする。
- 掲示係は、原則として主任1名、係員2名以上とし、審判員の判定の掲示および審判旗の点検・確認をする。
- 記録係は、原則として主任1名、係員2名以上とし、有効打突の部位および反則の種類と回数ならびに試合の所要時間などを記録する。
- 選手係は、原則として主任1名、係員2名以上とし、試合者の召集・用具などの点検にあたる。
細則 第23条
審判員の服装は、次のとおりとする。ただし、その大会で定められた場合は、この限りではない。
- 上衣は紺色(無地)とする。
- ズボンは灰色(無地)とする。
- ワイシャツは白色(無地)とする。
- ネクタイはえんじ色(無地)とする。
- 靴下は紺色(無地)とする。
第 2 章 審判
第 1 節 審判事項
(有効打突の決定)
第26条
有効打突の決定は、次による。
- 2名以上の審判員が有効打突の表示をしたとき。
- 1名が有効打突の表示をし、他の審判員が棄権の表示をしたとき。
(有効打突の取り消し)
第27条
試合者に不適切な行為があった場合は、主審が有効打突の宣告をした後でも、審判員は合議の上、その宣告を取り消すことができる。
細則 第24条
規則第27条(有効打突の取り消し)不適切な行為とは、打突後、必要以上の余勢
や有効を誇示した場合などとする。
(有効打突などの錯誤)
第28条
審判員が有効打突などの判定に疑義がある場合は、合議の上、その是非を決定す
る。
細則 第25条
規則第28条(有効打突などの錯誤)は、次のとおりとする。
- 有効打突または反則を錯誤して判定した場合。
- 時計係の試合時間終了の合図が確認できず試合が継続され、有効打突の判定が行われた場合。
- 反則回数を錯誤して、試合が継続され、有効打突の判定が行われた場合。
(審判方法)
第29条
審判員は、次の方法により審判を行う。
- 審判員のうち、1名が有効打突の表示をした場合は、他の審判員は自己の判断を直ちに表示しなければならない。
- 主審は、有効打突が決定し、または試合を中止した場合は、試合者を開始線に戻した後、試合を再開させる。
- 審判員は、反則を認めた場合、試合を中止させ、旗を直ちに表示しなければならない。ただし、反則の事実が不明瞭なときは、合議の上、その有無を決定する。
- 主審は、つば(鍔)競り合いがこうちゃく(膠着)した場合は、試合者をその場で分け、直ちに試合を継続させる。
- 主審は、試合者が中止を要請した場合は、中止を宣告した後、その理由を質す。
- 判定によって勝敗を決する場合は、審判員は、主審の「判定」の宣告と同時に旗で表示を行う。
細則 第26条
規則第29条4号「分かれ」は、次の要領で行う。
- 「分かれ」の宣告をし、両者を分け、直ちに試合を継続させる。
- 分かれさせる位置は、試合場内とする。
細則 第27条
主審は、試合者の竹刀の弦が上になっていない場合、1回のみ明確に指導する。
第 2 節 審判の処置
(負傷または事故)
第30条
負傷または事故などにより試合が継続できない場合は、その原因を質し、次の処
置をする。
- 試合継続の可否判断は、医師の意見を徴し審判員の総合判断とする。その処理に要する時間は、原則として5分以内とする。
- 負傷により試合が継続できないとき、その原因が一方の故意および過失による場合は、その原因を起こした者を負けとし、その原因が明瞭でない場合は、試合不能者を負けとする。
- 負傷または事故者として処理された者は、医師および審判員の判断により、その後の試合に出場することができる。
- 加害者として負けとされた者は、その後の試合に出場することができない。
(棄権)
第31条
試合を棄権した者は、負けとし、その後の試合に出場することができない。
細則 第28条
規則第31条(棄権)は、次のとおりとする。
- 健康上およびその他の事由により、自ら試合することを止めた場合。
(試合不能者・棄権者の既得本数)
第32条
第30条、第31条による勝者は、2本勝ちとし、試合不能者の既得の1本は有効とする。ただし、延長戦の場合は、勝者に1本を与える。
(加害者の既得本数、既得権)
第33条
第30条2号の加害者として負けとされた者の、既得本数、既得権は認めない。
第 3 節 合議・異議の申し立て事項
(合議)
第34条
審判員は、合議を必要とするときは、試合を中止し、試合場中央で、合議を行う。
(異議の申し立て)
第35条
何人も、審判員の判定に対し、異議の申し立てをすることができない。
第36条
監督は、この規則の実施に関して疑義があるときは、その試合者の試合終了までに、審判主任または審判長に対して、異議を申し立てることができる。
細則 第29条
規則第36条(異議の申し立て)の時期は、当該試合者の試合終了時の相互の礼までとし、その要領は次のとおりとする。
- 監督は、異議の申し立ての合図をする。
- 監督は、審判主任または審判長に疑義の内容を申し立てる。
第3章 宣告と旗の表示
(宣告)
第37条
審判員の宣告は、開始・終了・再開・中止・分かれ・有効打突・勝敗・合議・反則などについて行い、その要領は別表のとおりとする。ただし、とくに宣告に際し必要とする場合は、その理由を述べることができる。
(旗の表示)
第38条
審判員の旗の表示は、中止・分かれ・有効打突・勝敗・合議・反則などについて行い、その要領は別表のとおりとする。
第 4 章 補則
第39条
この規則に定められていない事項が発生した場合は、審判員は合議し、審判主任または審判長に諮って処理する。
付則
- 大会の規模、内容など特別の事情がある場合には、この規則および細則の目的を損なわない限り、これによらないことができるものとする。
- この規則は、平成31年4月1日から施行する。
細則 付則
- この細則は、平成31年4月1日から施行する。