「竹刀には魂が宿っている」「武士の魂である」という人もいる。
そこまで極端にとらえなくても良いが、稽古にはげみ、勝負に臨む大事な道具は大切に扱いたい。
「道具を大切に扱わないと、良いプレーは生まれない」とは、イチロー選手も語っている。
2025.04.29 update
竹刀の考え方
剣道は「竹刀という剣」をもちい、心気力一致をめざし、自己を創造していく道である。
剣道では竹刀をもちいて打突をおこなうが、
もともとは日本刀であったものを、稽古での安全のために竹刀へ置き換えてきた経緯がある。
昔の侍は刀を自分の命の次に大事なものとして、大切に取り扱ってきた。
現代の剣道においても同様に、竹刀は大切にあつかうべきである。
竹刀の各部名称
「中結」は剣先から竹刀全長の1/4の位置に固定する。「物打」は剣先から中結までの部分である。
竹刀に関する規格
高校生の場合、下記のとおり決められている。
令和元年の秋季大会より、東京都高体連でも大会前の竹刀の検査を実施することになっている。
安易に考えていると、すべての竹刀が検査を通過できないのでよく注意するとともに、手入れも怠らないことである。
検査で合格すると、竹の部分(通常は裏鎬の鍔元近く)にシールが貼られる。これが無いと不正用具とみなされ、当該の試合だけでなく、当日の以後の試合すべてに出場できない。
- 竹刀の中には、「先革内部の芯」と「柄頭のチギリ(金属製の四角片)」以外の異物があってはならない。
不足した重量を調整するために、異物を入れてごまかそうとする事例がある。
また竹刀をテープ等で補修したものも認められない。
- 四つ割りの竹の合わせに、大きな隙間があってはならない。
剣先を軽くして振りやすくするために、意図的に削る場合が見られる。
ささくれの補修のために削りすぎた場合も、隙間が大きくなる場合がある。
また修理で竹刀のピースを組み替えたことで、大きな隙間が生じることがある。
- 上記に限らず、安全性を著しく損なうような加工をしてはならない。
- 竹刀の長さ、重さ、太さは下記の通りとする。
太さを測るには、専用のゲージがある。
| 性別 | 規格 |
長さ | 男女 | 117cm 以下 |
重さ | 男 | 480g 以上 |
女 | 420g 以上 |
太さ | 男 | 先端部:26 mm以上 ちくとう:21mm 以上 |
女 | 先端部:25mm 以上 ちくとう:20mm 以上 |
- 鍔は直径9cm以下の円形とする。
ただし、検査は鍔なしの状態でおこなわれる。
- 滑り止めのための加工を施した柄革は使用してはならない。
滑り止めのためのイボイボが付いた柄革がある。
- 華美な装飾を施してはならない。
鍔元の折り返しに、装飾を施したものがある。
- 竹刀の銘柄や氏名・学校名以外の文字を彫ったものは使用できない。
四字熟語などを彫ったものは使えない。
焼印を使う場合も、同様である。
- 中結の位置は、剣先から竹刀全長の1/4程度の位置にしっかり固定する。
触って位置が動くほど緩いのは、修正させられる。
この位置に固定することが、最も安全であることが実証されている。
- ツルに緩みがあってはならない。
ツルに弛みがある状態は、打突時に先革が抜けて露出した竹の先端が相手にケガを負わせる原因となる。
実際に失明に至った事故が発生している。
- 竹刀には「ささくれ」や「割れ」があってはならない。
いずれもケガに直結する危険が高い。
事前に確認して「割れ」は交換するしかないが、「ささくれ」については手入れをすれば使用できる場合がある。
なお検査項目ではないが、検査時には大量の竹刀が入り交じる可能性があるため、
学校名と氏名を明記しておかないと、竹刀が紛失してしまう可能性がある。
長さは、いわゆる38(サンパチ)と呼ばれるモノである。
38寸(3尺8寸)のことで、大学生以上は39(サンク)、中学生は37(サンシチ)と呼ばれる。
ちなみに一寸は約3cm。
長い竹刀は規定違反となるが、短い分には違反とならない。ただし短い竹刀は重量不足の場合が多いので、よく確認が必要。
長さや太さ等の規格については、マトモな武道具店で販売されているものは規格を満たしているはず。
詳しくは、
全日本剣道連盟の試合・審判規則 を参照。
竹刀の選び方
竹刀は各個人の剣風や好み、筋力によって合うモノが異なる。
実際に持ってみて、しっくりくるものから選ぶのが良い。
完成品でなく竹だけで選ぶ場合は、柄や先革を付けるとまたバランスが変わってくる。
一般には竹刀の重心が手元に近いほど、重さを感じない。ただし軽く感じすぎる場合は、打突も軽くなる場合がある。
逆に剣先に重さを感じる竹刀は打突がしっかりする傾向にあるが、素早くは振りにくい場合も多い。
柄の長さも竹刀操作に影響する。
一般には柄頭を肘の内側にあてて持った時の長さがちょうど良いとされている。
この際、鍔や小手の綿の厚みも考慮すべきことに注意する。
(下の写真では、小手をはめるとその厚みで1~2cmほど短くなってしまう。)
柄が長ければ右手の位置が重心に近くなり、竹刀を振り回しやすく、特に返し技が打ちやすくなる。
また、近間での攻防や鍔ぜりからの技を出しやすい。
ただし、構えた時や面の打突時には身体が開き加減になってしまい、打ちもしまらない傾向がある。
柄が短ければ竹刀を振り回すようなことはしにくいが、姿勢は良くなり、遠間からの面もしまった打ちになる。
わずかな操作で竹刀を動かせるので、すりあげ技をやりやすい。
あまりに短い柄はスピードが早く手数も多い高校生の勝負では現実的でないが、極端に長いのも良い剣道が身につかない。
柄の太さも、好みが分かれるトコロである。
これも竹だけで選ぶ場合は、柄を付けて小手をはめると、その分の厚みから太さが増すことは頭に置いておくべきである。
竹刀全体のトータルバランスとして、自分の感覚に合うモノを見つけていくことになる。
初心者は、自分の中になにも基準がないので、まずは完成品の竹刀を2~3回振ってみて、
「振りやすい」と感じたものをあまり迷わずに選ぶのが良いだろう。
何回もあれこれを振ったりしても迷いだけが増え、訳がわからなくなってしまうかもしれない。
竹刀の抜き方
竹刀を腰にとった「帯刀」の状態から、竹刀を抜いて構える際は、
剣先が左の肩口から円をえがいて、二の腕を削るように抜く。
帯刀の状態から、そのまま剣先を下からまわして構えてはいけない。
鞘に収まっている日本刀を考えれば、
下からまわすと鞘から抜刀できないことは理解できるだろう。
竹刀を落とした時
稽古や試合中に竹刀を落としてしまうこともある。
その場合は、竹刀と上座の間の位置へ移動し、上座側の膝を立て、反対側の膝をついて丁寧に拾い上げる。
右手で拾い上げた場合は、立ち上がった後に左手に持ち替える。
どちらが上座か曖昧な場合は、自分の身体の左側、竹刀の柄頭が前方向になる位置へ移動し、
左の片膝をついて左手で拾い上げる。取って立ち上がった時は、「提げ刀」の状態になっている。
決して立ったまま、上半身だけを屈めて拾ってはならない。
試合場で竹刀の置き方
大会会場や錬成会では場所が手狭な場合も多い。
特にすぐ後ろに壁がある場合には、壁と並行に置くようにする(あるいは壁際に置く)。
そうすると、他の人が通過する際に竹刀を跨いだりすることがない。
竹刀を跨がれて不愉快に感じることもないし、通過する人も気を使わずに済む。
カーボンシナイ
竹刀は「竹」で作られているが、これを化学製品に置き換えたモノが「カーボンシナイ」である。
公式戦での使用も認められている。事実上は
「長谷川化学工業」の製品 のみが許可されている。
カーボンシナイは衝撃に対して丈夫であり、「ささくれ」や「折れ」に対して強い耐久性をもっている。
強豪校などで激しい稽古に取り組んでいる選手は、1月に10本以上の竹刀を潰してしまうという。
経済的にショックが大きすぎる場合には、使用を検討するのも良い。
竹刀に比べれば一本は高価だが、長い目で見れば経済的な場合も多い。
なかなか折れたりしないが、折れた場合もその一本のみを交換すれば良い。
ただし使ってみた感覚は、竹の竹刀とは違いがある。
特に打突時のしなり具合が竹とは違い、手応えがかなり異なる。
感覚的なモノなので、嫌がる人はまったく受け入れられない場合もある。
初心者がいきなり使うには高価すぎるので、まずは竹の竹刀ではじめて、
破損するペースなどに応じて検討すると良いだろう。
竹刀の手入れ
竹刀の手入れ方法については、
こちらを参照。